コラム

情けは人のためならず?

2020/3/31 考える知識

生物学者のウィリアム・ドナルド・ハミルトンは、動物の行動を4つに分類しました。その中でも特に有名なのが、他者が損しても自分が得をする「利己的行動」、自分が損をしても他者が得をする「利他的行動」です。

 生物は基本的に「自分が生き延びて自分の性質を受け継いだ子供を後世に残す」ことを目標としているために、しばしば利己的行動をとります。例えば、オスライオンが別のオスライオンの子供を殺してしまうのは、未来の自分のライバルを排除するための利己的行動です。

 しかし、中には他者の子供の世話をするような利他的行動をとる生物もいます。ハチなどがそうです。ハチの仲間は、女王バチの産んだ子供を働きバチが育てます。何故でしょうか。働きバチが優しいから?

 いいえ、違います。働きバチは元々、自分で卵を産んで仲間を増やすことが出来ません。女王を中心とした群れが生き延びてくれることが唯一、自分と同じ性質を受け継いだ子供が後世に残る方法なのです。その証拠に、天敵に巣をおそわれたときに働きバチが子供を食べてしまう場合があります。天敵に食べられるよりは自分で食べた方が、群れにとって無駄にならないからです。彼らにとって、利他的行動と利己的行動は同じだと考えられます。「情けは人の為ならず」ということわざのようですね。

一覧へ戻る