コラム

雨

2020/5/28 考える知識

日本にはたくさんの雨を表す言葉があります。長い時間を掛けてしとしと降る雨、短い時間にざんざん降る雨、晴れているのに降る雨──温帯湿潤気候で雨の多い日本では、一口に雨と言っても様々な雨があり、日本人はその細かな違いを敏感に感じ取っていたのです。一説には雨の呼び名だけで400語以上あるとか。今日はその一部を紹介します。

 まずは、もうすぐやって来る「梅雨」。「つゆ」や「ばいう」と読みます。夏至の頃を中心として前後20日ずつくらいの雨期を指す言葉です。梅の実が熟して黄色く色づく時期と重なることからこの漢字が使われます。

 次は「時雨」。「しぐれ」と読みます。晩秋から冬にかけての、降ったり止んだりを繰り返すあまり強くない通り雨のことです。時雨自体は冬の季語ですが、蝉が一斉に鳴いたり鳴き止んだりを繰り返す様子を時雨に例えた「蝉時雨」という夏の季語もあります。

 梅雨も時雨もそれぞれ関連語がまだたくさんあるあるので是非調べてみましょう。これからの時期、雨が続くと憂鬱になりがちですが、今降っている雨にはどんな言葉がぴったりか考えながら過ごすのも良いかもしれませんね。

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情けは人のためならず?

情けは人のためならず?

2020/3/31 考える知識

生物学者のウィリアム・ドナルド・ハミルトンは、動物の行動を4つに分類しました。その中でも特に有名なのが、他者が損しても自分が得をする「利己的行動」、自分が損をしても他者が得をする「利他的行動」です。

 生物は基本的に「自分が生き延びて自分の性質を受け継いだ子供を後世に残す」ことを目標としているために、しばしば利己的行動をとります。例えば、オスライオンが別のオスライオンの子供を殺してしまうのは、未来の自分のライバルを排除するための利己的行動です。

 しかし、中には他者の子供の世話をするような利他的行動をとる生物もいます。ハチなどがそうです。ハチの仲間は、女王バチの産んだ子供を働きバチが育てます。何故でしょうか。働きバチが優しいから?

 いいえ、違います。働きバチは元々、自分で卵を産んで仲間を増やすことが出来ません。女王を中心とした群れが生き延びてくれることが唯一、自分と同じ性質を受け継いだ子供が後世に残る方法なのです。その証拠に、天敵に巣をおそわれたときに働きバチが子供を食べてしまう場合があります。天敵に食べられるよりは自分で食べた方が、群れにとって無駄にならないからです。彼らにとって、利他的行動と利己的行動は同じだと考えられます。「情けは人の為ならず」ということわざのようですね。

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ナスカ? いいえ、ナス科です

ナスカ? いいえ、ナス科です

2020/3/2 考える知識

ナス、トマト、ジャガイモ、ピーマン、トウガラシ……これらの共通点は何でしょう? 「全部、野菜!」? うーん、それはそうなのですが、あともう一押し。実は皆、ナス科の植物であるという共通点があります。

 「科」というのは生物の分類の一つで、簡単に言えば、同じ科の生物同士は親戚同士です。例えば動物ならイヌやキツネは「イヌ科」、ウシやヤギは「ウシ科」の仲間。確かに、体のつくりや食べるものなどがそれぞれ似ていますね。そして植物も、花や葉のつくりなどの良く似た者同士が同じ科の仲間とされています。例として、先に挙げたナス科の植物たちの花を調べてみましょう。どれも良く似た星形の合弁花を咲かせることが分かります。皆さんが目にするときには、お家の方や給食センターの方によって美味しくきれいに調理されていることが多いかもしれませんが、たまにはその前の姿を調べてみるのも面白いでしょう。ナス科の植物に限らず、他の身近な動物や植物も、興味を持って観察したり調べたりすることによって、何か新しい発見があるかもしれません。

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暖冬

暖冬

2020/2/1 考える知識

この冬は東日本と西日本を中心に平年の平均気温を上回る暖冬が続いています。お陰でダイコンなどの野菜が豊作ですが、一部の農家からは悲鳴があがっています。育てている作物が豊作になるのは良いことのようにも思えますが、何故悲鳴があがるのでしょうか。

 皆さんは「豊作貧乏」という言葉を知っていますか。農作物は豊作になりすぎると、しばしば価格低下を起こします。需要(じゅよう)に対して供給過多となるからです。酷いときには価格が下がりすぎて、売れば売るほど赤字になってしまいます。この現象が豊作貧乏です。

 暖冬傾向はこの先もしばらく続く見込みで、そのために廃棄される農作物は例年の5倍から8倍にのぼると見られています。消費者側は質の良い農作物を安く手に入れることが出来ますが、背後にはそういった農家の苦労があるのです。

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サンゴ礁

サンゴ礁

2020/1/5 考える知識

最近、環境に関するニュースなどでサンゴをめぐる話題が多くなっています。特に「サンゴ礁を作る造礁性サンゴの白化が深刻な状態にある」という話を耳にすることが増えていますが、そもそも白化とは何か、サンゴ礁の白化が進むと地球の環境にどんな影響があるのか、皆さんはご存知ですか。

サンゴは褐虫藻という藻と共生しており、褐虫藻が光合成で生み出す養分をもらって生きている動物です。環境悪化などで褐虫藻が減ると充分な養分が得られず、サンゴの骨格が白く透けて見えてきます。これが白化です。白化がひどくなったサンゴは死んでしまいます。

そしてサンゴ礁は全海洋の0.2%を占めており、海洋生物の種数の四分の一から三分の一がサンゴ礁に生息すると言われています。また、サンゴ礁には自然の防波堤として近辺の島を波から守る働きもあります。サンゴが死に絶えるということは、サンゴ以外の多くの生物も危険にさらされるということなのです。

ではサンゴを守るために、私たちは何ができるのでしょうか。まずは一人ひとりがこうした状況に興味や関心をもつことです。自分には関係ないと思わず、何が起こっているかを知ること、危機感を持つことを大事にしましょう。

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クモの糸

クモの糸

2019/12/9 考える知識

歩いていたら何かが千切れるような感触がして、気がついたらクモの巣に引っ掛かっていた……なんて経験はありませんか? 急いでいるとき顏や髪にクモの糸がつくとなかなか取れずにイライラしますが、実はこのクモの糸がすごい可能性を秘めた素材であると皆さんご存知でしょうか。

なんと強度は鋼鉄の約5倍、伸縮率はナイロンの約2倍もあり、計算上は、鉛筆ほどの太さの糸でクモの巣を作ればジャンボジェット機ですら捕まえられます。しかも鋼鉄よりもずっと軽く、300度の熱にも耐えられ、紫外線にも強いなど、まさに夢の繊維です。

 クモは縄張り争いや共食いなどが起こりやすいため養殖が難しく、長らく大量生産ができないとされてきましたが、近年はバイオ技術により人工的にクモの糸を作り出すことに成功し、宇宙服や飛行機、人工血管への利用など、様々な分野での実用化が期待されています。

 それを知ると、クモが巣を張る姿も応援したくなる……かも!?

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リチウムイオン電池

リチウムイオン電池

2019/10/29 考える知識

2019年のノーベル化学賞が、リチウムイオン電池の開発に貢献した吉野彰さんら3人に授与されることが決まりました。何の役に立つのか一般人には分かりづらい研究が対象となりがちなノーベル賞ですが、リチウムイオン電池は、スマートフォンや電気自動車の心臓部などのバッテリーに使われている身近なものです。

 従来の電池では「たくさんの電気を溜めておくこと」や「充電して何度も使うこと」ができませんでした。とても重い材料を使っていたので、持ち運びにも不便でした。ところが、1970年代にウィッティンガム氏が、リチウムという金属を電池のマイナス極に使うことによって「蓄電能力が高く、充電ができて、とても軽い」電池が作れることを発見したのです。しかし、その電池には破裂しやすいという欠点がありました。その欠点を解消し、より効率の良い製品に仕上げたのがグッドイナフ氏と吉野氏なのです。

蓄電能力が上がった現在のリチウムイオン電池には、環境に優しい太陽光電池や風力発電の、天候に左右されるという弱点を補う役割が期待されています。また、災害への備えになる点も評価されています。開発から40年越しの受賞にも、きちんと理由があるのですね。

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世界に誇る児島のジーンズ

世界に誇る児島のジーンズ

2019/10/3 考える知識

 高い品質で海外のジーンズファンからも高い評価を得ている岡山のデニム。岡山の中でも特に倉敷市児島はジーンズの街として知られていますが、そもそも何故この地でデニム産業が栄えたのでしょうか?

 昔、児島は名前の通り島でしたが、江戸時代初期に干拓によって本土と陸続きとなりました。干拓地の新田はもともと海だったことから塩気があり、それが抜けるまでは米などが栽培できないので、米が作れるようになるまでの間のつもりで塩気に強い綿花の栽培を始めたところ、大成功し、その後も引き続き栽培されるようになったという歴史的な背景があります。更に、倉敷市と同じく岡山にある井原市は、江戸時代から藍染めを得意とする地域でした。そこで綿や藍染めを活かし、戦後になってジーンズが作られ始めたという訳です。

 現在岡山では、ジーンズ作りに必要な工程のほとんどを県内で完結させることができます。世界に誇る「岡山デニム」は、地元の特産が上手く組み合わさって作り出されているのです。

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種子島

種子島

2019/8/26 考える知識

前回のコラムでは、「はやぶさ2」について書きました。種子島には宇宙センターがあり、日本で人工衛星やロケットを打ち上げるに際はここから打ち上げられます。はやぶさ2も例外ではありません。では、なぜ種子島が打ち上げ場所として選ばれたのでしょうか?

 第一に、人口密集地から離れているため。万が一事故が起きても被害が最小限に済むよう配慮されているのですね。

そして第二に、赤道に近いためです。地球上には、物質同士が互いに引き合う引力と、地球の自転によって発生する遠心力がはたらいていて、これらを合わせたものが地球の中心に向かって引っ張られる力、つまり重力となります。遠心力が少ない南極や北極に比べ、遠心力が大きい赤道付近では重力が小さいということです。当然、重力が小さいほうがロケットなどを打ち上げやすくなります。

 ちなみに、アメリカのロケット打ち上げ基地は南部のフロリダ州、ロシアの打ち上げ基地は南側にあるカザフスタン共和国と、やはりどの国も極力赤道近くに打ち上げ基地を置いています。ロケットや人工衛星そのものの開発だけではなく、打ち上げ場所一つ取ってもきちんと計算されているのですね。

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すごいぞ、はやぶさ2!

すごいぞ、はやぶさ2!

2019/7/31 考える知識

先月11日、種子島を飛び出して4年半あまりのJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が、再び小惑星リュウグウへの着陸に成功しました。それだけではありません。世界で初めて、小惑星内部の物質採取に成功したのです。

はやぶさ2は今年2月、小惑星表面の物質を採取するために1回目の着陸に成功。4月には、小惑星に弾丸を放ちクレーターを作りました。クレーターを作った際に噴き出した地下の物質は、太陽光などの影響を受けず、小惑星が生まれた頃の状態を保っているとみられています。

そして今回の2回目の着陸で、その地下物質が採取されたというわけです。これが無事地球に持ち帰られれば、太陽系の起源を探る研究に役立ちます。はやぶさ2は今年中に小惑星を離れ、来年には採取した物質を地球に届ける予定です。宇宙の秘密が1つ解き明かされるかもしれないなんて、ワクワクしますね!

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