コラム

脂肪動機

脂肪動機

2022/1/5 考える知識

皆さん、お正月はどのように過ごしますか。おせちやお雑煮などをついつい食べ過ぎてしまうという人も多いかもしれませんね。そうなると気になってくるのが体脂肪です。

体脂肪とは体に貯えられた脂肪のこと。体重に占める体脂肪の比率をパーセントで表したものは体脂肪率と呼ばれ、健康状態の目安の一つにもされています。最近では体脂肪計なども普及し、一般家庭でも体脂肪率を測りやすくなりました。しかし、一般的な体脂肪計で採用されている「微弱な電流を身体に流す」方法は、気軽にできる反面、正確な測定が難しいそうです。では、もっと正確に体脂肪率を測る方法はないのでしょうか?

 もちろんあります! それは「水中体重秤量法」と呼ばれる、アルキメデスの原理の応用で、水中に全身を沈めて水中にある体重計で体重を量り、大気中での体重との差から身体密度を計算して測定する方法です。体脂肪は約0.9g/㎤、その他の組織は約1.1g/㎤ですから、同じ重さでも押しのける水の量が違う……ってわけ。でも全身が入る水槽を用意しなきゃいけないなんて、やっぱりお家では難しいですね。

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昆虫の冬越し

昆虫の冬越し

2021/11/9 考える知識

 だんだんと寒くなってきましたね。こんな時期は外で散歩をしても、夏の間によく見かけたバッタやカマキリ、セミやトンボの姿が見られません。彼らは冬の間どこで何をしているのでしょうか。

 実は一口に昆虫と言っても様々で、卵の状態で冬を越すもの、幼虫の姿で冬を越すもの、さなぎの状態で冬をこすもの、成虫の姿で冬を越すものがそれぞれいます。

 たとえば、カマキリやコオロギ、バッタなどは卵で冬越しします。すべて「不完全変態」と呼ばれ、さなぎの時期がない成長過程を持つ虫ですね。

幼虫で冬越しする虫は、どこで冬を過ごすかによって大別できます。幼虫が土の中で冬越しするのがカブトムシやセミの仲間です。セミの幼虫は、冬だけでなく何年もの年月を土の中で過ごし、木の根から樹液を吸って生きています。儚いイメージのセミですが、実は昆虫の中ではトップクラスの長生きなのです。また、クワガタやカミキリムシの幼虫は、枯れかけた木の中で冬越しし、ホタルやトンボの幼虫は水の中で冬越しします。

 チョウの仲間の多くはさなぎの姿で冬を越しますが、成虫の姿で冬越しするキチョウや幼虫の姿で冬越しするオオムラサキなどの例外もあります。

 成虫になって冬越しするのは、テントウムシ、ハチ、アリなどです。テントウムシは落ち葉の下などに集団で身を寄せ合っています。アリは寒くなると土の中に潜り込み、眠ったように動きません。

人間の目に触れない間、昆虫たちは寒さに耐えてじっと身をひそめているのです。

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ドングリころころ

ドングリころころ

2021/10/7 考える知識

秋分も過ぎ、だいぶ涼しくなってきましたね。公園などでは可愛い“ドングリ”を見かけるようになりました。ところで、皆さんは“ドングリ”の正体が何だか知っていますか?

 ドングリとは、広義にはブナ科の果実の俗称です。つまり、ブナ科クリ属であるクリの実も含みます。また、狭義にはクリ、ブナ、イヌブナ以外のブナ科の果実の俗称です。皆さんが想像するドングリはだいたいこの範疇にあるのではないでしょうか。ドングリ=種子だと思っている人も多くいますがそれは誤りで、本当の種子は果実であるドングリの果肉の中にあります。種子の大部分を占める子葉はデンプン質に富み、動物の食料になります。もちろん、人間が食べることもできますよ。

 昔は大型の草食恐竜がドングリを丸呑みすることによって未消化の種子が運ばれ発芽していましたが、恐竜の絶滅後はリスなどが冬越しのための貯食でドングリを埋め、そのまま忘れられてしまったものが発芽していると考えられています。もしリスが生まれていなければ恐竜とともに絶滅していたかもしれないんですね!

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線状降水帯

線状降水帯

2021/9/13 考える知識

 今年は大雨のニュースで「線状降水帯」という言葉をたくさん耳にしましたね。線状降水帯とは何か、発生したらどう行動すればいいのか、今一度確認しておきましょう。

 線状降水帯を形作るのは、積乱雲です。季節や形によっては「入道雲」「雷雲」などとも呼ばれますね。夕立のような非常に強い雨を降らせる代わりに一つ一つは1時間程度で消滅してしまうという特徴があります。

 この積乱雲が連続して発生し、上空の風の影響で帯のように連なると線状降水帯になるのです。線状降水帯が上空にできると、一つ一つの雲の寿命は短くても次から次へと新しい雲がやってくるので、強い雨が長時間降り続けます。これにより土砂災害や洪水が起こることも珍しくありません。

 気象庁は「顕著な大雨に関する気象情報」として今年の6月17日から、線状降水帯の発生に関する速報を出しています。速報が出た場合は、周囲の人と声を掛け合いながら早めに避難しましょう。また線状降水帯は台風などよりも予測が難しく、速報が出たときにはすでに激しい雨が降っていることも考えられます。浸水などで避難が難しい場合、2階以上かつ崖と反対側の部屋で救助を待ちましょう。大雨に限らず、日頃から災害を想定しておくことが大事です。

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お盆ってなんだろう?

お盆ってなんだろう?

2021/8/1 考える知識

 皆さん、いかがお過ごしでしょうか。お盆休みを楽しみに待っている人も多いかもしれませんね。しかし近年、お盆の本来の意味は意外と知られていないもの。そこで、今回は日本におけるお盆の持つ意味や起源について改めて確認しておきましょう。

 お盆は、正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と言い、日本古来の祖霊信仰と仏教が融合した行事です。お盆の期間は亡くなられた方やご先祖様があの世からこの世に戻ってくると言われ、故人が生前を過ごした場所、主に自宅でお迎えし、再び戻っていくあの世での幸せを祈る機会となっています。江戸時代までは旧暦715日を中心に行われていましたが、明治時代になり太陽暦が採用されてからは、農繁期と重ならないよう新暦815日を中心に行う地域が多いようです。

 夏祭りでおなじみの「盆踊り」もお盆を起源とし、元はあの世から戻ってきた亡者が喜んで踊っている様子を模したものだそうです。……盆踊りの輪にときどき混ざっている、浴衣が左前になっている人──もしかして、着付けを間違えたわけじゃなかったりして……。

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死の海

死の海

2021/7/1 考える知識

 夏至も過ぎ、だんだん暑くなってきましたね。夏といえば海ですが、海といえば「死海」ってご存じですか?

 死海とはアラビア半島北西部、ヨルダンとイスラエルの間にある塩湖のこと。生き物が住むことのできない塩辛い水がたくさん湛えられているところ──ということで「死海」と呼ばれていますが、実際には遠い昔、白亜紀頃に海から隔てられた湖です。その塩分濃度は約30%! 海水ですら約3%ですから、これは驚きの濃さ。わずかながら川が流れ込むものの出口がないので今ある塩は流れていかないし、気温が高いせいで、雨や川で流れこんでくる水とほぼ等量かそれを上回るくらいの量の水が蒸発するから、高い塩分濃度が保たれているんですって。

これだけ濃いと、人間が入った時の浮力も並ではありません。 水よりも食塩のほうが密度が高いので、塩水というのは濃ければ濃いほど密度が大きい=物が浮きやすいのですが、死海の湖水の密度は1.3g/㎤ほど。人間は脂肪が0.9 g/㎤くらい、骨と筋肉が1.1 g/㎤くらいですから、どんなにムキムキのマッチョでも死海では浮いてしまうことになります。一度体験してみたいものですね。

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セミは数学好き?

セミは数学好き?

2021/5/29 考える知識

今年は昆虫学者にとって特別な年です。なぜかって? それは「17年ゼミ」の一番大きな群れが発生する年だから!

 北アメリカには「周期ゼミ」や「素数ゼミ」と呼ばれる、毎世代ほぼ正確に17年または13年で成虫になり大量発生するセミがいます。それぞれ17年ゼミ、13年ゼミと呼ばれていて、ほぼ毎年どこかで発生してはいますが、同じ地方では周期ごとにしか発生しません。そして今年は一番大きな群れが17年ぶりに大発生するというわけ。その数なんと数十億匹! セミ嫌いからすると悪夢そのものですが、彼らはなぜ「17年」や「13年」という周期で大発生するのでしょうか。

 答えは、生き残るため。

まず1713といった素数年での発生は、同じように周期発生する捕食者や寄生虫と出会いにくくするためだといわれています。例えば、もしセミの発生周期が12年だったら、2年周期や3年周期で発生する寄生虫とは常に同時発生する羽目になってしまいます。しかし13年であれば、2年周期の寄生虫とは26年ごと、3年周期の寄生虫とは39年ごとにしか出会わないのです。また一度に大量発生することで、捕食者に食べつくされないようにしていると考えられています。

 セミが素数を利用しているなんて、面白いですね。

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クリエイショニスツ・ナイトメア

クリエイショニスツ・ナイトメア

2021/5/21 考える知識

 お母さんのお乳を飲んでこどもが育つような生き物のことを「哺乳類」と言いますね。私たち人間も哺乳類です。哺乳類は、今からだいたい1.5憶〜2憶年くらい前に爬虫類から進化したと言われています。その証拠として考えられている生き物をご存じですか? そう、オーストラリア大陸東部とタスマニアにのみ生息するカモノハシです。

 カモノハシはお乳を出して子供を育てるので哺乳類に分類されていますが、爬虫類の特徴を多く持っています。例えば、普通の哺乳類は、赤ちゃんが生まれる穴とおしっこの出る穴・うんちの出る穴が全て別です。しかしカモノハシは全部同じ穴! これは爬虫類の特徴です。また、前述のお乳にしても、普通の哺乳類なら乳首から出ますが、カモノハシに乳首はありません。お腹から直接にじみ出てくるのです。極めつけに、カモノハシは卵を産みます。他にも、くちばしにある電気のセンサーで餌の位置を探し当てたり、蹴爪に毒を持っていたり……哺乳類でありながら爬虫類の特徴をたくさん備えているため、爬虫類が哺乳類へ進化し始めた初期の頃に生まれた生物だと考えられているのです。はじめに気づいた人はビックリしたでしょうね。


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オランダからの借り物

オランダからの借り物

2021/4/1 考える知識

 お転婆、ポン酢、オルゴール……これらの言葉の共通点が分かりますか? 正解はオランダ語からの借用語であるということです。どうでしょう、オルゴールは英語だと思っていませんでしたか? お転婆やポン酢に至っては、元々日本語だと思っていた人も多いのではないでしょうか。

 オランダは1609年、長崎県の平戸で日本と貿易を開始し、日本が鎖国となってからもヨーロッパで唯一交易を保ち、様々な文化や物を日本に伝え続けました。その過程においてたくさんのオランダ語の言葉が流入、定着したというわけですね。ギプス、メス、ピンセットなど医療関係のオランダ借用語が多いのも、当時の日本がオランダから多くの医療技術を学んでいたためでしょう。

 他にも、インキ、コップ、ソーダ、モルモット……などなど、オランダからの借用語を挙げればキリがありません。ふだん英語だと思って使っているその言葉、本当に英語ですか? オランダ語以外にも、ポルトガル語やスペイン語がまぎれていますから、調べてみるのも面白いですね。

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渋沢栄一

渋沢栄一

2021/3/2 考える知識

一昨年、日本政府と日本銀行から「2024年に紙幣を新しくする」と発表がありました。その新一万円札に描かれるのが、「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢(しぶさわ)栄一(えいいち)です。

彼は現在の埼玉県深谷市に豪農の子として生まれ、江戸時代末期には幕府に仕え、明治維新後でも新政府で様々な法整備に努めました。その後は政府内で数々の功績を残しながらも役人を辞め、実業家として多くの会社や機関の設立・育成に関わり、日本を発展させました。その数は500を超えるといいます。渋沢栄一について良く知らないという人でも、日本初の銀行「第一国立銀行(現在のみずほ銀行)」を設立したのも「日本鉄道(現在のJR東日本)」に資金援助をして大きくしたのも渋沢栄一だと知ったら、驚くのではないでしょうか。まさに「近代日本経済の父」ですね。

新一万円札に起用されたことにより注目度が高まっている渋沢栄一。今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」も、渋沢栄一を主人公に幕末から明治までが描かれています。是非家族で視聴しましょう。

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